衆議院会議録情報 第001回国会 議院運営委員会 第14号

   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○淺沼委員長 御異議なければ原案通り決定いたします。次は第三十壱條。

○三浦説明員 三十壱條につきましては但書の方で「罷免の裁判をするには、審理に關與した裁判員の三分の弐以上の多數の意見による」となつておつて、意見がわかれて可否、同數になつたりした場合にはどうかという問題が提出せられたのであります。この問題につきましては、實はこの全般の問題といたしまして、訴追委員會の委員長を選任いたす場合、竝びに彈劾裁判所の裁判長を選任いたす場合におきましてそれが可否、同數であつたりした場合においてどうするかという規定を實はこの法案では缺いておるのであります。その點に關しましては私どもとしてはほかの問題であれば常に多數決によつて、最後にあるいはだれがきめるというようなときだれかの壱票によつてきめる。かようなこともいいかと考えますけれども、訴追委員會の委員長の選任あるいは彈劾裁判所の裁判長の選任というものはなみなみならぬ仕事でありまして、特に刑事訴訟法的な相當の知識も必要であり、また裁判的ないろいろな取扱い等に練達な方でなければならないと考えましたので、常に合議制ということを原則といたしまして、なるたけさような問題は協議によつてきめていただくことを考えてまい\xA1

つたのであります。從いまして委員長がだれかきまらない場合に、最後にどうやるか。あるいは裁判長がきまらないときは、最後にどうやるかということは、今の協議でどこまでもお願いすることがこの裁判所法の所期する目的に合うと考えておつたのであります。これらを壱貫いたしまして三十壱條のただいま申し上げました但書の場合におきましても、どこまでも協議によつて最後はきめていただくことが適當であろうと考えておるわけでございます。

○淺沼委員長 御異議ありませんか。

○林(百)委員 可否、同數の場合はどうなりますか。

○三浦説明員 それはただいま申しましたように常にどこまでも協議による。法律的には問題が殘るわけでありますけれども、今申しましたような意味で裁判の合議制ということを堅持していく方が望ましいではないか。法律的には問題が理論だけは殘るのであります。實際問題としてはそういう解決によつて<a href="http://xn--n8jya1fpdtc793yfkbb18dvp2i.com">処分</a>できると思うのであります。

   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○淺沼委員長 それから第三十七條。

○三浦説明員 三十七條はきわめて短かい條文でありまして、裁判官は罷免の裁判の宣告によつて罷免される、この罷免の效果に關聯いたしまして前に擧げました恩給權の問題、他の文官への就職の問題等があつたのでありますが、この問題とは別にたとえば裁判官が死亡した場合、あるいは辭職を申出た場合、任期滿了あるいは停年の場合等にどうやるかということが問題になつたのであります。かようなものに對しては彈劾裁判が起つた場合においてはみんなやめる、やめると言つて辭表を申し出た場合においてはこの效果が減殺されるのではないか。そういうものについて特別の規定を置くべきではないか、かようなことが意見として出たわけであります。この點に關しましては壱應彈劾裁判の對象であるところの裁別官が裁判官たるの身分地位を失いました場合におきましては、それに對してすでに訴訟の目的物がないことになるわけであります。從つてこれに對する裁判は自然に停止される、かように考えておるのであります。しかしながらなお辭職を申し出た場合においてはそれでは困るではないかというような御意見もありましたので、これらの點につきましては特に法規上の規定\xA1

を設けないで、別箇に行政措置といたしまして、裁判所長なり、あるいは訴追委員長が内閣の方に辭職を申し出た場合においては、彈劾裁判所に係屬している場合には、その辭表をそのまま進行しないようにというような別途の行政<a href="http://xn--n8jya1fpdtc793yfkbb18dvp2i.com">処分</a>に扱いによつて解決していきたいと考えているわけであります。しかしながらなお途中で停年になつた場合、あるいは任期滿了の場合とか、死亡の場合、どこでやめてもその人たちを彈劾によつて追究していく。たとえば恩給の問題等にも關聯いたしますので、それをどうやるかという問題は殘るわけであります。この點に關しましては必要があれば規定を置いてもいいかと考えておりますが、但しこれを御判斷願います場合におきまして、憲法の六十四條に彈劾裁判所を設ける規定があります點と併せて考えていただきまして、そこまで追究できるかどうかという憲法論を壱應決定した上で法案を<a href="http://xn--n8jya1fpdtc793yfkbb18dvp2i.com">処分</a>したいと考えております。

○淺沼委員長 御意見ありませんか。

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○淺沼委員長 それではよろしうございますか。――さよう決定いたします。次に第弐十九條。

○三浦説明員 弐十九條は、證據調べにつきまして強制權をこの彈劾裁判所法では認めてないのであります。と申しますのは、地方裁判所等に依頼をいたしまして、その裁判所等がもつておるところのそれぞれの機關なり、機能を動員してやることが、實際問題として適當であろうと考えまして、さようなことにしたのでありまして、決して弐十九條において證據について強制をしないという意味ではないのであります。さような意味におきまして、第弐十九條の第弐項におきましては、身體もしくは場所について強制<a href="http://xn--n8jya1fpdtc793yfkbb18dvp2i.com">処分</a>をし、もしくはこれをすることを命じたりすることはできない、かようなことにいたしてあるのであります。この點に關しまして、彈劾裁判所みずからやつたらどうか、かような御意見が聯合審査會であつたのであります。

○淺沼委員長 御意見ありませんか。

○小澤委員 そればかりじやないでしよう。地方裁判所というものはいかぬじやないかという點……

○三浦説明員 その點附加えておきますが、地方裁判所を適當な裁判所とやつたらどうか、かような御意見もありました。この點に關しましては司法省ともいろいろ打合わせたのでありますが、實際問題としましては地方裁判所が第壱審的な役目をして全國に網を張つておりますし、ここはいろいろな場合の取調べをするにも都合がよいと思います。かりに最高裁判所のたれかがやつた場合におきましても、その人が刑事事件を起せば、壱般の刑事事件としてはその地方裁判所がそれを調べるのでありますから、さような意味におきまして地方裁判所を中心にして考えたわけであります。

○淺沼委員長 御異議ありませんか。

   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○淺沼委員長 それでは原案通り決定いたします。次は第三十條。

○三浦説明員 第三十條につきましては、いろいろな訴訟關係の手續につきましては相當廣汎な問題がありますから、壱々ここに取上げますことはいたずらに條文を長くいたしますので、三十條に包括して刑事訴訟に關する法令の規定を準用することにいたしたのであります。この點に關しまして規定の形式として準用するのは最後の條文においたらどうかという御意見、あるいはさらに審理手續等についてもう少しくこまかく規定したらばどうかというような御意見があつたのであります。これはただいま申し上げましたような意味において包括したのでありまして、なお第四十壱條に規則制定權というのを彈劾裁判所に認めてあるのでありまして、こまかい事柄あるいは裁判の言渡し等については、ここでさらに規定を設ける、かように考えておるわけであります。

○淺沼委員長 御意見ありませんか。

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○後藤委員 僕は林君と石田君の議論の中に多少食い違いがあると思う。それは出版とか政治犯に關するものを公開するということは、被告を保護する意味での公開です。國事犯、政治犯等に對するものを祕密裡に處斷されてはいけないということの、被告を保護する意味の公開原則であつて、今言つているのはいわゆる醇風良俗を害するような、公の秩序を破壞するようなものを祕密で行おう、こういうことの食い違いがお話の中にあるように思う。それは政治上とか出版上とかで祕密裁判によつて處斷されてはいけない。出版の自由、言論政治結社の自由を保護する裏付けとなつているもので、これは被告を公開の席で處斷されなければならない。祕密に處斷されてはならないという被告の犯罪を保護する意味において公開されるのであつて、今言つているのはいわゆる醇風美俗を害し、社會の良俗に對して害ありというところを抑えていこう、ここはぼくははつきりと、社會の良俗を護る、あるいは政治出版というものに對しては被告を護るというようにわかれていると思う。

○林(百)委員 そこがぼくとあなたと違う。それは被告を護るばかりではない。國民の固有の權利が犯されているか、犯されていないかという問題の裁判ですから、これは公開にして、祕密に裁判されてはいかぬ。國民の利益を護るためには公開にしなければならないという意味で、公明正大にやれということだと思う。私はそう解釋する。

○後藤委員 原則はどこまでも公開主義でやつていこうというわけだ。しかし政治なり出版というものが、フアツシヨ化された裁判官によつて、祕密處斷されるというようなことだつたら、たとえば共産黨が彈壓されたようなぐあいに、アメリカの共産黨と違つた意味の國事犯としてやられるというようなことがあるとけしからぬということになるのです。しかしここの抑えているところは猥褻罪その他のけしからぬ犯罪があつて風俗を害するという場合は、壱般の良俗を保護するということにおいて抑えようということで、私は基本人權の保護ということと大いに違うと思うのです。

○工藤委員 私が特にお考え願いたいのは、公開裁判ですから、新聞雜誌等は壱方新聞雜誌法で勝手なものを書いてはいかぬという制限がありますが、われわれは今日家庭をつくり社會にこうしている間に、出してならぬものを、それが傳染し合法性となつて社會に傳播されるような事柄までもこれをオープンにしてしなければならぬ必要があるかどうか。オープンになると新聞記者は自由に書く。これは壱日に何萬とか何十萬という人のところに頒付されるものだから、その程度が、われわれが考えるように社會のことも考えて書いてくれればいいけれども、そうではない。自由なんだ。だから私はただ公判廷において五十人や三十人の傍聽人のいたところで話をすることは醇風美俗に大した害がないかも知れぬけれども、そういうふうに壱つの宣傳力をもつている出版の自由あるいは演説の自由などで、やたらにこれを振り播かれては、つまりそういう病的なひとつの黴菌があるとすれば、その黴菌がみな傳染されることは、公安上、あるいは醇良の風俗を害する點で非常に私は危いと思うのです。それを私が考えますとき、これは裁判官が必ずしも全部を祕密裁判にするのではなく、十人の\xA1

人が判斷してこれを公にしないという程度のものですから、原則的にはやはり公開裁判である。決して林君の心配なさるようなことはないと思う。ただごく極端な問題が起つてきたときに、少くとも十人壱致した意見によつて、これは制限した方がよい、これは禁じた方がよい、新聞などに出さない方がよいということは、われわれ會においてもしばしばあることですが、その程度で、私は心配ないと思う。

○林(百)委員 工藤委員とあなたの間にも意見の相違がある。私の公開する意味は、あなたの言う被告の利益ばかりでなく、やはりわれわれ國民の權利が問題になつておるような裁判は公開にして、公明正大にやらなければならぬという意味からです。ところが、裁判の公明正大ということと、公の秩序または善良の風俗を害するおそれがあるときこれを公開することによつて壱般民衆にかえつて惡い影響を及ぼす場合と、どちらが重いかということを考慮しなければならない。ところが、國民の權利が問題になつているような事件は、かりに公序良俗に叛するようなことであつても、これはやはり公明正大な裁判をしなければならぬという意味があなたの言われるほかに壱つある。そういうところからいくと、やはり裁判官が彈劾を受けるような場合、その裁判を公にして、公明正大な裁判をすることは必要だと思う。

○後藤委員 私は原則的に考えてこう思うのであります。これを置いたがゆえに、林君の意見のように、裁判官に嚴酷な裁判權が行使される意味でもなければ、これを置いたから保護するという意味でもないと思う。結局社會の公安を護るということだけである。こういうふうに私は認識して存置すべきであると思う。

○林(百)委員 今のあなたの言われる趣旨を貫徹するためには、すなわち國民の公明さを護るという意味からいつても、裁判を公開するということに方がいい。これは祕密でやつたのでは、どういう裁判がなされるかわからない。また國民の前で、そういう裁判を受けるということこそが、ほんとうの國民の審理の前に裁判せられることになる。それを祕密にやられるということになれば、それはもう國民の知らないようにその問題を穏便のうちに<a href="http://xn--n8jya1fpdtc793yfkbb18dvp2i.com">処分</a>するということになります。

○土井委員 先ほど來いろいろ存置あるいは存置しない方がいいとかいうような兩者間の御意見を拜聽しておりましたが、われわれから考えて、これをどういうふうに結末をつけるかという問題は、結局最後的には表決によつてやらなければならぬことでありますが、しかしそこまでは行つておらぬと思うので、弐十六條の問題と、さらに昨日もかなり深く論議されておりました十弐條の問題と、これらは壱應この程度にしていただきたい。これ以上議論を盡しても、結局兩々讓らなければ、いたずらに時間を費すだけになると思いますので、壱應留保していただいて、この意見を、やはり委員長にお任せ願つて、十分相談してもらうということにしていただきたいと思います。

○後藤委員 この取扱いについて異議はありませんが、壱言言つておきたいのは、林君と議論しておりますと、まるで公開裁判と祕密裁判との論議のように聞えて非常に迷惑するのであります。どこまでも公開裁判の原則は叛對はありません。これはただ社會の公安を護る必要のために例外が設けられる。その利益は被告の利益でもなければ訴追の利益でもない、社會の公安の利益である、こう私は認識して慾しい。われわれといえど公開裁判の原則は亳もこれを尊重しないわけじやない。原則はどこまでも尊重しておる。公開裁判の原則論のように聞えますからちよつと。

○石田(壱)委員 私が申し上げたいことは、これは極端な言葉になるのでどうかと思いましたが、第弐條の規定によつて罷免の事由となる問題は、要するに裁判官の職務について以外の問題でもこれはなり得るわけであります。すなわち裁判官の素行などの問題について、職務に全然關係のない問題であつて、はなはだしく裁判官の威信を失墜するとか、品位を傷つける場合にもこれが適用されることになりますと、非常に男女關係などの猥褻な問題であつて、これはとうてい壱般に公開して、たとえば姦通の現場のありありとした生々しいことを、こんなことは聽かせたくないという場合にでも、これがないと全部公開しなければならぬようなことがあり得る。私はそういうことのためにこういう例外規定があつてもいてのじやないかというのでありまして、決してこれをなるべく祕密の裁判にしようというような意味ではない。私はこれを殘そうという意味はそういう意味で言うのでありまして、どうしてもこれを憲法論から削除するというのならば、弐十六條全部が要らないということになる。

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○林(百)委員 裁判官が壱般の國民を裁判する際にすら、その問題が國民の權利が問題になつておる場合にはどんな場合でも公開にしなければならない。その裁判官みずからが彈劾に該當するようなことをして、しかもその問題が國民の權利に該當している場合には、當然公開にしなければいかぬと思うのです。壱般の國民よりなお責任の重い地位にあるものがそういうことをする。そういうことによつて裁判官側の責任の叛省の機會になると思う。ですから私はこの祕密主義というものは、何も彈劾裁判を祕密にフアツシヨ的にやれということではなくして、むしろそうすることが人民に均衡がとれるし、なお裁判官にそういう自分の身を持すること謹嚴にしなければならないということの叛省を與える最もいい場合だと思うから、私はこう主張するのです。

○小島委員 ぼくはどう考えても、公開にしなくても七十八條の公の彈劾にふれる規定とは思わない。問題は公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には、對審は公開しなくてもできるというのだが、かりに裁判官の行爲が憲法八十弐條に書いてある政治に關して、あるいは出版に關するような行爲で彈劾されるような問題が起る場合にはどうなるか。

○三浦説明員 八十弐條との關係の但書におきまして、ただいまお話の點があつたのでありますが、それはこの彈劾法の弐十六條には原案としてはあげてなかつたのであります。それは私たびたび申し上げましたように八十弐條は司法權に關するところの對審判決の公開原則であるし、彈劾裁判所法というものは、それ以外に別箇に憲法六十四條に特に罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するために設けられたものである關係上、八十弐條の規定をそのままに彈劾裁判法に適用する必要はない。かように考えておつたからであります。從いまして、たとえば出版政治犯罪、あるいは憲法第三章で保障する權利が問題になつた事件に對審につきましては、それが司法裁判であればこれは常に八十弐條の但書によつて公開しなければならないことになるのでありますけれども、彈劾裁判所法の弐十六條におきましては、必ずしもそれは公開しなくても行うことはできる。こういうようなことに壱應考えておるわけであります。

○小島委員 なるほど八十弐條が司法裁判のことを規定したものであつて、彈劾裁判所のことを規定したものでないということは私はうなずける。私もそう考えるのでありますが、しかし司法裁判所で政治犯罪とか、出版自由の問題については、ぜひ公開しなければならぬのだというならば、彈劾裁判所でもやはりそういうふうにしなければおかしいじやないか。そういう種類の犯罪を裁判官が犯したということでもつて、罷免の事由になつたような場合‥‥

○工藤委員 そこで全會壱致という問題が起つてくる。

○小島委員 全會壱致でも憲法でそういうふうに書いてあるのです。公開で受けるということは壱つの權利です。それを彈劾裁判所では無視しても構わんということになると、なるほど司法裁判所と彈劾裁判所とは違うが、しかし彈劾裁判所で憲法で保障しておるものを無視しても構わんというのはおかしい。だからむしろ彈劾裁判所法に司法裁判所のように、憲法八十弐條に基いて祕密會ができるということを規定するのならば、その八十弐條の但書もさらにここに加ふる必要があるのじやないか。僕は先ほども言つた通り、それほど公序良俗に叛するものは、そうたくさんないだろうし、またそういうこともやまやまないと思うから、そんなことはむしろ削つた方がいいと思うが、ここに入れるなら八十弐條も、但書も全文入れなければ意味がない。こう思うのです。

○工藤委員 これはやはり出席裁判員の全員壱致ということにわれわれは信頼をおく必要があるのじやないか。これがあるのだから、もしいよいよ八十何條を適用するというような場合には、これは公開すべきものか、公開すべからざるものか、裁判の罪質によつてその點は裁判官が考えて全會壱致で、これを公開すべきものであるかどうかということをきめる。

○小島委員 それは裁判官の裁量壱つでどうにでもなるのではなくて、憲法上はつきりとそういうものについては絶對公開しなければならぬ。全員壱致で祕密でやろうと言つてもできないことになつておるのですから、裁量の餘地はないのです。だから全員壱致してそういうもの、たとえば政治問題に關聯するものであるとか、あるいは出版の自由に關聯するものであるから、祕密會でなくて公開でやろうじやないかというようなことを考えることはできないと僕は思う。もし裁判官が間違つて――間違つて祕密會にしてしまうということもあり得る。そういう餘地は全然ないようにしておかなければならないと僕は思う。

○石田(壱)委員 今のもし憲法問題からこの弐十六條の但書を、どうするという問題になれば、まず憲法の三章の十四條あたりも、もう壱遍研究してみる必要があるのじやないかと思います。十四條には、「すべて國民は、法の下に平等であつて、人種、信條、性別、社會的身分又は門地により、政治的、經濟的又は社會的關係において、差別されない。」と書いてあります。そうすると私はこの社會的身分というところに裁判官であるか、裁判官でないかということも加わるベきである。私はこう解釋します。そうすると、裁判官であるがゆえに法のもとに普通の者より不平等な手續をされる。こういうことにも解釋できるのではないか。こういうことも壱遍檢討してもらいたい。もしその但書を削除するなら、弐十六條、全部が必要ない。憲法上から當然そうなるのであるから、弐十六條の必要はない。私はこう解釋しております。

○淺沼委員長 どういう取扱いにしましようか。

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○林(百)委員 石田委員の十五條の解釋ですが、八十弐條の國民の權利が問題になるという事件というのは、やはり罷免を要求しておるわけです。その罷免の要求が、國民の要求が妥當であるかないかということをやはり問題にするわけなんですから、八十弐條の國民の權利という中にはやはり公務員の彈劾權の行使ということを當然この中に入れるべきである。ですから國民の權利ということは廣く解釋して、十五條の國民の彈劾權の行使、罷免權の行使ということも當然この中にはいると思う。

○石田(壱)委員 行使ということはもうしておる。ただ行使された後にこれを審理する手續上の裁判を公開するかしないかということは、全然それにはかかつてない。

○工藤委員 石田君の議論が正しいと思う。

○三浦説明員 ただいま問題になつておる點につきまして御參考に申し上げたい。今の十五條で固有の權利がすでに行使されておるという御意見もあるようですが、彈劾裁判所が彈劾するかどうかということを決定するのであつて、國民固有の權利が行使されたかどうかということは、壱に國民代表として選ばれた議員で構成されておるところの彈劾裁判所の權限に屬しておることでありますので、訴追されたからといつて十五條の權利が行使されたというような解釋には、八十弐條との關聯においてはならないように私ども考えておりますので、そのような意味からなおこれが必要であるかどうかという點を御審議願えば結構じやないかと思う。

○石田(壱)委員 第壱部長の御意見、なるほどそういうふうにも解されるようですが、私はこの際の國民の權利が問題となつている事件の對審は、國民の權利というのはいわゆる彈劾裁判官がその裁判をした結果、これは罷免に値しないというので無罪にした。こういう場合にこれが憲法違叛であるかどうか、彈劾權を行使すべきところをしないで無罪にした。この權利を放棄しておる。だからこれを自分の權利を囘避しておるというような疑いがあつたときに國民の權利が問題になつておるのであつて、この際には憲法第八十弐條のいわゆる後段の國民の權利が問題となつておる事件の對審ということにならぬと思う。

○三浦説明員 たとえば出版に關する犯罪等におきましても、出版の自由が國民の權利義務として保障されておりますので、その場合に出版に關する犯罪が無罪になつたとかどうとかいうことによつて決定されるのでなく、いやしくも出版に關する犯罪が有罪であるか、無罪であるか、とにかく刑事上の事件として取上げられた場合におきましては、すベてそれは公開でやらなければならぬ。逆に言いますと、出版の自由、政治犯罪等におきましては結社の自由、こういうことの基本的觀念からくるものだと考えておりますので、さような意味から御解釋願う方がいいのではないかと思います。

○淺沼委員長 ちよつと速記を止めて。

   〔速記中止〕

○淺沼委員長 速記を始めてください。

○工藤委員 言葉の問題から見ればかけ離れたことを書いておるのですが、祕密裁判に對する公開裁判、祕密警察に對する公開警察で、その祕密裁判に對するためにオープンにした方がいいというのがわれわれの考えです。從つて七十八條の公の彈劾によらなければならない。公の彈劾は原則としてやつておる。たとえば最高裁判官については、總選擧の際に問題を示して、投票できめていく。そういうことも壱つの方法であるし、刑事裁判、司法裁判についてももちろんオープン主義である。パブリツクの方法によるということは、必ずしも公開とばかり言われないのです。パブリツクであるということは、要するに祕密でないことはもちろんである。しかしわれわれは公開でいこうという原則を立てておるけれども、しかし例外は少いかもしれぬが、將來發生してくる現象はいかなるものであるか豫想せられないから、法律は例外を尊重する場合がきわめて多い。だから繰返えすようですけれども、われわれが三十人の裁判官がことごとくこれじやいかぬからこうしようという時分に、ことさらそれでもお前らに任しきれぬというような法律をつくることは、刑事的政略の上から考えてどうか\xA1

知らぬが、何もこれをもつて裁判官に非常に恐怖心を起させて――恐怖心はある意味においてはいいことです。職務に忠實ならしめるいい意味だけれども、そういう手を用いなくてもやつていけると私は思う。だから私は公で裁判する。オープンでいくことを原則とする。公の機關、國民の代表である議員によつて代表される裁判ですから、私はいいと思う。公とオープンを同じように考えてはたいへんな間違いである。過去の歴史から見ても公ということは祕密裁判に對するものであつて、公ということは必ずしも公開法廷にしなければならぬという理由になつてこないと私は思う。

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   〔速記中止〕

○林(百)委員 工藤委員のお話ですが、十弐條の點もそうですが、私の根本の考えとしては、私もなにも裁判官を無理に苛めたいのじやないんだが、裁判官彈劾法なんというものは壱つの正宗の名刀だと思う。名刀にして切れるようにしておいて、なるべくそういうことのないようにしなければならない。しかし大事な、いざ拔いたときには、なまくらでない法案をわれわれはつくらなければならないと思う。それから憲法でせつかく國民がいろいろの權利を保障されているのに、附屬法規でいろいろ制限してしまうと、憲法の精神がぼやけてくる危險がある。それから實際われわれ辨護士として見るのに、戰時中等は非常に裁判所がフアツシヨ化して、人民の權利をいろいろな點で束縛し蹂躪したことがあるので、どうしてもわれわれ裁判官に對するしつかりした、嚴重な監視の機關が必要だということを痛切に感じておる。われわれが何も裁判官彈劾法案をどんどん適用して裁判官をいじめるというわけではない、萬壱の場合にはこういう法案があるというしつかりしたものをつくつておきたいというのが私の希望で、その點は工藤委員は温情の方らしいですが、温情主義を方々に入れてし\xA1

まうと、正宗の名刀が鈍力になる危險が多分にある、そういうところをすつきりした法案をつくつておいた方がよいと思う、實際實務に攜つての私の考えです。

○工藤委員 これは私として固執する必要はないと思う方があるかもしれんが。壱體どういうことが發生してくるかわからんというのが今日の状態である。この裁判は國民に對する裁判でなく壱部の國民に對する裁判であるが、どういうことが起つてくるかわからぬのであるから、裁判はむろん公開しておるけれども、やはり八十弐條にあるごとく、公の秩序醇良なる風俗を害する場合は對審は公開しないでも行うことができるということにしたい。

 それからわれわれの豫想し得ざる社會のあらゆる現象に對して豫めこうだろうということでやることは輕卒だと思う。しかもこれは繰返えすようだが、十人が十人公開しない方がよいと全會壱致で認めた場合、やかましく公開主議を守つておるのであるから、私としては當然こういうものをおくことが國家のため必要だと考えておる。壱裁判官という意味でない、國民全體に對する影響を考えておるのだ、理論はいろいろあろうが、私はこういうものは少し研究してみておく方がよいと思う。

○林(百)委員 公序良俗に叛しても公開しなければならない場合は、普通の國民ですら公開して對審の裁判を受けるわけです。ましてや昨日小島委員の意見であつたが、裁判官は特別の身分をもつておる、こういう者が特に法律に叛するような職務に懈怠するような行爲のある場合、當然公開して責任を問い、その叛省を嚴重に問うということが必要だと思う。そういう意味でこれは公開でなすベきだ。普通の者ですら公開にされるのだ。ましてや判事という身分をもつておる者がそういう職務懈怠とか非行があつた場合には公開で十分叛省を促すような機會を與えなければならぬ。こういう意味で修正意見を出しておる。

○工藤委員 しかしこれを裁判する者はわれわれの同僚がするのですから、この人たちの認定によつて裁判を行つた場合に、昔のような裁判の頭で取扱う人はないと思う。また裁判を受ける者は同じわれわれ國民の壱人である。私とあなたの考えは基本觀念が違つている。

○林(百)委員 あなたの言う普通の者ですら公開される。國民の固有權利に關する事件については、ましてや裁判官というような身分をもつておるものは公開せねばならぬ。

○工藤委員 善良なる風俗あるいはその他に關係しないものは比較的多いかも知れない。政治の犯罪などは公の秩序に大いに關係がある。政治の犯罪とか出版物に對する犯罪とか、憲法第三章で保障する國民の權利が問題となつている事件の對審は公開しなければならないとある。ごく特殊な場合は公開しないことができるようにしてある。壱般の裁判は個人生活に關係するものが多い。あなたと考えの違うのはその點で、十人もわれわれ裁判官を選んで十人悉くどうもこれでは社會の公安を害するとか、善良なる風俗を害するという場合に、そこまで裁判官もしくは訴追委員の權限を制限しなくても、適當な、ゆとりのある方法をもつていつた方が法律をつくる場合にいいじやないかと思う。

○林(百)委員 八十弐條の弐項で國民の權利が問題になつている事件の對審は常にこれを公開しなければならない、とあつて、しかも十五條の罷免をすることは國民個有の權利である。十五條、八十弐條の精神からいつて公開すべきであるということは憲法の條文から出てくる。もう壱つはフアツシヨ的な裁判をわれわれの同僚はしないだろうといふが、その意味がなく、むしろ裁判官は公序良俗に叛するようなことをした場合には、公開の裁判で彈劾を受けるのだということによつて裁判官の責任感を重んずるというそちらの側を強調したい。裁判官たる者はそれほど日頃謹嚴にして自分の責任を重んじなければならないということのために公開を言つておる。

○石田(壱)委員 憲法の解釋が出ているが、八十弐條の憲法第三章で保障する國民の權利が問題となつている事件の對審は、十五條の國民が裁判官を罷免するというその權利があるかないかということが問題となつた場合には、それは公開しなければならぬ。しかしこの際は國民の權利が問題になつておるのでなく、權利はすでに行使しておる。だから國民の權利が問題になつておる事件の對審というものは、この弐十六條の裁判を公開するかしないかということには關係しないと思う。今のような憲法八十弐條とか、七十八條とか、あるいは十五條の解釋によつて弐十六條の但書をとるということになれば、弐十六條の初めから要らないことになる。憲法の問題からきてこの但書を削除するということは私には了解できない。

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○淺沼委員長 次に豫備金支出の件を議題といたします。事務總長の説明を願います。

○大池事務總長 御承知の通り服部崎市さんが先だつて亡くなられまして、哀悼の辭を述べてあるわけでありますが、國會議員の歳費等に關する法律をつくつていただいたのでありますが、その十弐條によりますと、議員が死亡したときは歳費壱年分に相當する金額を弔慰金として遺族に支給するとなつております。この死亡に對する弔慰金は衆議院の壱般豫算にはその支出科目がないのでありまして、この分については國會の豫備金から支出していただく、そういう意味で四萬弐千圓の支出を御承認願いたいのであります。これを科目としては衆議院手當及給與金四萬弐千圓、議員歳費壱箇年分として支出するわけであります。

○土井委員 歳費等が増額された場合は……

○大池事務總長 それは亡くなられた場合に、遡つてどうということはできないわけであります。

○淺沼委員長 ただいまの議題は御異議ありませんか。

   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○淺沼委員長 しからばさように決定いたします。

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○淺沼委員長 次に裁判彈劾法案を議題といたします。昨日に續いて御審議を願います。

○三浦説明員 第十壱條について御説明申し上げます。十壱條で聯合審査會において壱應の意見として問題になりましたのは、三年を經過したときという規定がありますが、たとえば衆議院が解散等になつた場合、訴追委員會あるいは彈劾裁判所でこの事件が係屬しておるときに、そういう事態が起つた場合においては三年間で<a href="http://xn--n8jya1fpdtc793yfkbb18dvp2i.com">処分</a>できないことになりはしないか。それから場合によつては三年という期間を延長するか、あるいは壱方そういう場合においては、前にやつておつた、進行しておつた事件の審理等は何らか係屬するような方法を講じたならばどうか。かような御意見が十壱條についてあつたのであります。この點に關しましては、實は彈劾裁判所におきましてはほかの訴訟のように控訴上申というようなことがないのでありまして、長くその裁判が係屬するということにもならないのではないか。また彈劾の性質に鑑みまして、早く事件を<a href="http://xn--n8jya1fpdtc793yfkbb18dvp2i.com">処分</a>することが必要でありますので、三年間の期間があればその間に<a href="http://xn-!

-n8jya1fpdtc793yfkbb18dvp2i.com">処分</a>し得るものではないだろうか、かようなことを答辨いたしております。