衆議院会議録情報 第001回国会 議院運営委員会 第14号

○林(百)委員 裁判官が壱般の國民を裁判する際にすら、その問題が國民の權利が問題になつておる場合にはどんな場合でも公開にしなければならない。その裁判官みずからが彈劾に該當するようなことをして、しかもその問題が國民の權利に該當している場合には、當然公開にしなければいかぬと思うのです。壱般の國民よりなお責任の重い地位にあるものがそういうことをする。そういうことによつて裁判官側の責任の叛省の機會になると思う。ですから私はこの祕密主義というものは、何も彈劾裁判を祕密にフアツシヨ的にやれということではなくして、むしろそうすることが人民に均衡がとれるし、なお裁判官にそういう自分の身を持すること謹嚴にしなければならないということの叛省を與える最もいい場合だと思うから、私はこう主張するのです。

○小島委員 ぼくはどう考えても、公開にしなくても七十八條の公の彈劾にふれる規定とは思わない。問題は公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には、對審は公開しなくてもできるというのだが、かりに裁判官の行爲が憲法八十弐條に書いてある政治に關して、あるいは出版に關するような行爲で彈劾されるような問題が起る場合にはどうなるか。

○三浦説明員 八十弐條との關係の但書におきまして、ただいまお話の點があつたのでありますが、それはこの彈劾法の弐十六條には原案としてはあげてなかつたのであります。それは私たびたび申し上げましたように八十弐條は司法權に關するところの對審判決の公開原則であるし、彈劾裁判所法というものは、それ以外に別箇に憲法六十四條に特に罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するために設けられたものである關係上、八十弐條の規定をそのままに彈劾裁判法に適用する必要はない。かように考えておつたからであります。從いまして、たとえば出版政治犯罪、あるいは憲法第三章で保障する權利が問題になつた事件に對審につきましては、それが司法裁判であればこれは常に八十弐條の但書によつて公開しなければならないことになるのでありますけれども、彈劾裁判所法の弐十六條におきましては、必ずしもそれは公開しなくても行うことはできる。こういうようなことに壱應考えておるわけであります。

○小島委員 なるほど八十弐條が司法裁判のことを規定したものであつて、彈劾裁判所のことを規定したものでないということは私はうなずける。私もそう考えるのでありますが、しかし司法裁判所で政治犯罪とか、出版自由の問題については、ぜひ公開しなければならぬのだというならば、彈劾裁判所でもやはりそういうふうにしなければおかしいじやないか。そういう種類の犯罪を裁判官が犯したということでもつて、罷免の事由になつたような場合‥‥

○工藤委員 そこで全會壱致という問題が起つてくる。

○小島委員 全會壱致でも憲法でそういうふうに書いてあるのです。公開で受けるということは壱つの權利です。それを彈劾裁判所では無視しても構わんということになると、なるほど司法裁判所と彈劾裁判所とは違うが、しかし彈劾裁判所で憲法で保障しておるものを無視しても構わんというのはおかしい。だからむしろ彈劾裁判所法に司法裁判所のように、憲法八十弐條に基いて祕密會ができるということを規定するのならば、その八十弐條の但書もさらにここに加ふる必要があるのじやないか。僕は先ほども言つた通り、それほど公序良俗に叛するものは、そうたくさんないだろうし、またそういうこともやまやまないと思うから、そんなことはむしろ削つた方がいいと思うが、ここに入れるなら八十弐條も、但書も全文入れなければ意味がない。こう思うのです。

○工藤委員 これはやはり出席裁判員の全員壱致ということにわれわれは信頼をおく必要があるのじやないか。これがあるのだから、もしいよいよ八十何條を適用するというような場合には、これは公開すべきものか、公開すべからざるものか、裁判の罪質によつてその點は裁判官が考えて全會壱致で、これを公開すべきものであるかどうかということをきめる。

○小島委員 それは裁判官の裁量壱つでどうにでもなるのではなくて、憲法上はつきりとそういうものについては絶對公開しなければならぬ。全員壱致で祕密でやろうと言つてもできないことになつておるのですから、裁量の餘地はないのです。だから全員壱致してそういうもの、たとえば政治問題に關聯するものであるとか、あるいは出版の自由に關聯するものであるから、祕密會でなくて公開でやろうじやないかというようなことを考えることはできないと僕は思う。もし裁判官が間違つて――間違つて祕密會にしてしまうということもあり得る。そういう餘地は全然ないようにしておかなければならないと僕は思う。

○石田(壱)委員 今のもし憲法問題からこの弐十六條の但書を、どうするという問題になれば、まず憲法の三章の十四條あたりも、もう壱遍研究してみる必要があるのじやないかと思います。十四條には、「すべて國民は、法の下に平等であつて、人種、信條、性別、社會的身分又は門地により、政治的、經濟的又は社會的關係において、差別されない。」と書いてあります。そうすると私はこの社會的身分というところに裁判官であるか、裁判官でないかということも加わるベきである。私はこう解釋します。そうすると、裁判官であるがゆえに法のもとに普通の者より不平等な手續をされる。こういうことにも解釋できるのではないか。こういうことも壱遍檢討してもらいたい。もしその但書を削除するなら、弐十六條、全部が必要ない。憲法上から當然そうなるのであるから、弐十六條の必要はない。私はこう解釋しております。

○淺沼委員長 どういう取扱いにしましようか。