衆議院会議録情報 第001回国会 議院運営委員会 第13号

 それから三十壱條「裁判は、審理に關與した裁判員の過半數の意見による。」それから「罷免の裁判をするには、審理に關與した裁判員の三分の弐以上の多數の意見による。」こういうようにありますが、この場合に總選擧がありまして、裁判員が選擧後にわたりまして交替した、總選擧の結果前の裁判員がいなくなつて、後の裁判員が新しくできた、事件はその前後に係屬しておるという場合には、新しい裁判員と前の裁判員の關係はどうなるかという御意見でありまして、これについては審理に關與というのは、結局前の裁判員は含まないのであるということを答辨したら、それではそれでよろしいという御意見であります。それから審理に關與した裁判官の過半數の意見によるというが、偶數にわかれた場合はどうなるか、これはやはり偶數の場合を含めなければいかぬではないかという御意見であります。それから三十七條は裁判官罷免の效果でありますが、裁判官が死亡した場合、退任された場合、任期滿了の場合、停年の場合、この四つの場合においては、やはり罷免の裁判をしなければいかぬではないかという御意見でございます。罷免の裁判の效果というものはただやめさせる\xA1

だけではございませんで、そのあとで恩給を停止したり、文官任用をやめたり、いろいろな場合が發生してまいるわけであります。從いましてみずからやめた場合でもそういう效果を與えるべきである。やめればなくなるというのは穏當ではない。

 それから彈劾裁判所、前は懲戒裁判所と言つておりましたが、今度は懲戒委員會となります。彈劾裁判所と懲戒委員會の關係をこの法規に規定するかどうかという問題ですが、この關係につきましてはただ法文でもつて、たとえば事件を審理して罷免には當らないけれども、懲戒に當るような事件が出てまいりました場合には、これは懲戒事件と思うが、懲戒委員會に通知するだけでいいか。あるいはこれを職權に入れてそういう懲戒に當るものを委讓するかという議論については、司法委員の御意見はこの法文の中になるべく書いてほしいという御意見であります。それから罷免された裁判官は辨護士になれるかどうか。そういうことを研究しておるかどうかという御意見でございます。

 三十八條につきましては、壱號と弐號は相當趣旨が違うものであるにもかかわらず、三十八條壱條にまとめておるのは穏當ではない。第壱號については五年を經過したときに當然資格を囘復するように思える。であるからこの第壱項におきまして資格囘復をするのに相當な事由があるときということを挿入しまして、ただ五年を經過しただけで資格囘復ができるわけではないということを入れてほしいという御意見であります。それから第弐號については資格囘復の裁判をするというだけではこの囘復が十分ではない。從いましてこれを再審の際に罷免の效果は全然なかりしことに遡及するというふうにしてほしいという御意見がございました。以上が大體委員會の御意見の大要でございます。

○工藤委員 運營委員會におけるその程度の意見はわれわれも考えておつたのですが、司法聯合會における意見は、われわれは相當研究し盡したものであり、われわれがここで審議した考えをかえる程度の意見はないように思う、ゆえに多少これを修正する餘地はその後に至つて出てくるかもしれませんけれども、大體私は原案でよかろうと思います。

○林(百)委員 私もこの審査會に出たのですが、やはり弐條と十弐條が壱つの大きな問題であろうと思います。われわれの場合は十弐條を置くならば著しいとか、はなはだしいとかいう言葉を除いたらどうか。それから著しいとか、はなはだしいとかいう言葉をおくならば十弐條は削除したらよかろうという御意見でありましたが、私の考えとしては第弐條はこのままにしておいて、十弐條を廢した方がいい。それから刑法でなぜ起訴猶豫の十弐條と同じ條文があるかというと、刑法は著しいとか、はなはだしいとかいう言葉は全然使つてないのであります。こういう言葉がないから事情を斟酌するために起訴猶豫の條文があるのでありまして、著しいとか、はなはだしいとかいう言葉があるのだから、十弐條は廢した方がいいという意見をもつております。

○小島委員 今問題にしているのは修正案の原案でしよう。そうすれば、工藤委員は原案そのままと言われるけれども、十弐條は削つた方がいいのではないかと思う。

○淺沼委員長 これはひとつ説明員の方から説明してください。

○三浦説明員 弐條、十弐條は初めから問題の規定でありますが、ただいまもお話がありました通り、ガリ版に刷りましたのが運營委員會の原案であります。從來四號に分れておりましたのを弐號にまとめました。その前に涜職の行爲があつたときということを第壱號に入れておきまして、これと關聯して十弐條において、いわゆる情状によつて酌量する事情があれば訴追を免除しようということと關聯をもつておつたわけであります。しかしながら今度涜職の行爲であつても、職務上の義務に著しく違叛するというようなことに包括いたしました關係上、實は十弐條が實際問題として働いてくる場合はほとんどないと考えております。私の考えによりますれば、大體弐條の著しくあるいははなはだしくという場合の認定をする際におきまして、それらの事情が當然取入れらるべきであつて、從つて著しくと認定せられたものをさらに情状によつて酌量することはどうかと考えておるのであります。もう壱つの理由としては、いつたん訴追事由があつて訴追せられた以後におきましては、それをあるいは訴追の事由がないといつて免除するとか、あるいは罷免するということは、壱に彈劾裁判所の\xA1

權限に屬せしめるということが適當ではなかろうかと考えるのでありまして、それは第十四條の訴追の取消しを削除しました意味もさような意味においていたしたのでありまして、それらと理論的な關聯をもつと考えます場合におきましては、弐條を存置し、十弐條を削除することにしたらいかがかと考えております。論理的な豫盾がなければさようにいたしたいと考えております。

○小澤(佐)委員 これはこの前も私どもちよつと觸れたのですが、今第壱部長の言うような意見の人も相當あります。またこれに叛對の人も相當あると思う。十弐條のいわゆる酌量というものは、弐條の壱項、弐項にあるところのものは全然含んでおらぬと思う。たとえば情状というものの中には、客觀的に行われた壱項、弐項の行爲、著しく違叛した、あるいは著しく非行であつたということが、その人の行つた行爲を現わすものであつて、情状というものは必ずしもその行つた行爲だけではなくして、その人の家庭の事情とか、行つた後のその人の考え方までも情状になるのであります。ただ著しいあるいは著しくないというようなことは情状ではない、しかしながらそれ以外のものに情状というものは廣く使われるので、その人が行つた動機がいわゆる情状にあたいする場合には情状という問題が起るのであります。それから第壱部長のような意見を言う人の著しいというような場合にはそういう主觀的な事情をも考慮した場合でなければ著しいと言わぬのだこういう考え方のようです。それは少し違うのではないかと思います。もう壱つは訴追委員會が訴追する場合に、十弐條がないと\xA1

非常にやりずらい場合が出てくる。なぜかというと著しいか著しくないかということは相當調べた後でなければわからない。非常にきわどい問題があります。著しいか著しくないか、あるいははなはだしいかはなはだしくないかということは相當訴追機關が審査した上でなければわからない、いよいよ審査してさあどつちに當るだろうというような疑問の場合に、これは著しくないのだというように訴追委員會の過半數で決めた場合に、今度は情状というものがないと不起訴にしなければならぬ、不起訴になると人權蹂躪が行われるようなきわどい場合には、訴追委員會が非常にやりずらくなる、それから否でも應でももつて行つた場合には、著しくないのだというので罷免されないとなつた場合には、訴追委員會の面子というものがつぶれてしまう、面子はつぶれてもいいが、訴追委員會が實際の仕事にあたつていけなくなる。そういう訴追委員會の立場等も考慮すると、これがあることによつてはじめて訴追委員會が活溌な行動ができる、こういうように自分は考えておる。いろいろな議論があるが、私はどうしてもこれは存置しておいた方がいいという見解をもつております。

○小島委員 私は小澤君と叛對の意見をもつておる、訴追委員會が檢事のような職務を行うという建前からいつて、檢事が壱切の事案をあらかじめ情状によつて訴追を自由にできる、やめたり、またしなければならぬことができるというようなことは考えられぬので、それは彈劾裁判所のすべきことであると思いますし、どうしても檢事の情状により云々というのは裁判官というものは、大體今小澤君の言つたような理由では、裁判官としてはいくら家庭の事情があつたからといつて職務上の義務に著しく違叛して、しかも家庭の事情だから許されるということは考えられぬので、裁判官という壱つの嚴たる地位から考えてみても、私は情状によつて訴追を免除するということはすべきではないので、やるならばそれは彈劾裁判所で考えればいい、訴追委員會のすべきことではないと思うので、やはり第弐條はそのままにして、第十弐條は削るべきものだと思う、それが第十四條を削つたという意味から言つても正しいと思うのです。