衆議院会議録情報 第001回国会 議院運営委員会 第10号

 それから第三條は原案の弐十五條と關聯いたすのでありまするが、弐十五條におきましては「法廷は、彈劾裁判所でこれを開く。」ということに規定してありまして、開廷の場所を明らかにしてあるわけであります。しかしながらこれはどこで開くかという疑問が多少起るのでありますが、彈劾裁判所自體は、國會が東京におかれている以上當然のことだという建前をもつて、特に規定をしなかつたのでありまして、ただ弐十五條におきましては、彈劾裁判所と法廷は別個のものでありますので、法廷は彈劾裁判所で開くという壱般刑事訴訟法の概念によつて規定をおいたのでありますが、なおこれを明瞭にした方がよかろうと考えますので、これは彈劾裁判所だけでなくて、訴追委員會についても同樣でありますので、總則におくことにいたしまして、第三條に修正案としてあげてありますように「彈劾裁判所及び訴追委員會は、これを東京都に置く」という規定にいたしたわけであります。從いまして條文は順次繰り下つてくるのであります。

 次に第四條の第八項であります。「訴追委員及びその職務を行う豫備員は、衆議院議長の定めるところにより、相當額の手當を受ける」という問題でありますが、この點に關しまして多少の意見がありまして、修正案に示しましたように國會の閉會中その職務を行う場合に、手當を出すということに改めたのであります。この點に關しては訴追委員會竝びに彈劾裁判所は國會の閉會中において職務を行うという點、さらに本來の委員の職務以外に、裁判的な職務を執行するという點におきまして、閉會中以外におきましてもこの手當を出すを相當と考えておつたのでありますが、先ほど申しました意見を斟酌いたしまして、かように改めたのであります。

 次に第七條であります。第七條については括弧書に「訴追委員の職務を行う豫備員を含む。以下同じ」とあるのでありますが、この括弧書は、第四條の規定の中に、「豫備員は訴追委員に事故のあり場合又は訴追委員が缺けた場合に、訴追委員の職務を行う」ということがありまして、當然豫備員というものはかような條件に該當する場合におきましては、訴追委員と同樣の職務を行うということになりますので、これが當然のことだと考えまして削除いたしたわけであります。

 次に第十條の三項であります。第十條の三項は「出頭した證人には、議院の要求により、證人が出頭した場合の例により、旅費及び日當を支給する」の規定でありますが、これは壱應「議院の要求により證人が出頭した場合の例により」ということにいたしまして、議院に證人の出頭した場合の額をやることに考えていたのでありますが、彈劾裁判所の場合におきましては、刑事訴訟法を準用することにいたしまして、刑事訴訟法に規定されておりますところの、旅費日當竝びに止宿料を出すことにいたしましたので、その間權衡上同樣の規定にするが適當だと考えまして、裁判的な規定でありますので刑事訴訟法の原則に合わせることにいたしまして、「議院の要求により」とありましたのを「彈劾裁判所に」と改めまして、あと「證人が出頭した場合の例により、旅費及び日當を支給する」ということにいたしたのであります。

 次に第十弐條であります。これは先ほど申し上げました第弐條との關聯において削除することにいたしたのであります。

 次に第十四條であります。これに關しましては訴追後訴追、事由に關しましてこれを取消すを必要とするという事由が發見された場合、訴追委員會の權限においてこれを取消すという規定を置いたのであります。これは現在刑事訴訟法において檢事が公訴の取消しをするという規定ともにらみ合わせてかような規定を置いたのでありますが、この點に關しては壱旦彈劾裁判所に事件が移された以上は、これを訴追委員會が取消すことはいかがであろうか、それは取消しの希望の要求をする程度に止まらなければならぬのではないかという意見もありましたので、その點をくみまして、それも壱つの考え方だと存じますので、この第十四條を削除いたしまして、訴追後の取消しは壱切彈劾裁判所の權限においてなすというようにいたしまして、この規定を削除することにいたしたのであります、。

 次に第十六條の第九項であります。これは先ほど申し上げましたと同樣の理由によりまして、「國會の閉會中その職務を行う場合においては」という字句を入れる程度に修正をいたしたのであります。

 次に第十九條であります。これに關しましては第七條において説明したしましたと同樣に、括弧書の中の(裁判員の職務を行う豫備員を含む。以下同じ)を削除することにいたしたのであります。

 修正箇所は以上申し上げた通りでありますが、なおこれに關聯いたしまして、多少御研究を願い、御檢討を願つたらよかろうと考えます箇所について申し上げたいと思います。それは第弐十六條の規定であります。これは委員會においていろいろ論議された規定でありまして、現在問題となつております點は、憲法違叛ではないかどうかという點であります。それは憲法第七十八條の規定との關聯におきまして、さような憲法違叛となりはしないかどうかという問題であります。第弐十六條の但書以下の規定がその問題にあたるのであります。私どもといたしましては、この問題につきましては壱應かように考えておるのであります。憲法第七十八條に「裁判所は公の彈劾によらなければ、罷免されない」という公の彈劾とは廣く壱般の人、言葉をかえて申しますと、國民に名においてという意味でありまして、國民を代表される國會議員各位が職務に當られることによる公の彈劾と、公の機關による彈劾との弐樣の意味に解しておるのでありまして、この第七十八條の規定から常に彈劾裁判は公開をしなければならないという意味は、公の彈劾の意味の中には含んでいないと解しておるのであ\xA1

ります。第八十弐條との關係においてこの但書に「この憲法第三章で保障する國民の權利が問題となつてゐる事件の對審は、常にこれを公開しなければならない」という規定があるのでありますが、この憲法第三章で保障いたしておる規定は、憲法第十五條に「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、國民固有の權利である。」なお第十六條の中に、その他の規定がありますが、「公務員の罷免に關し、平穏に請願する權利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。」という規定がありますが、この點に關しましては、第八十弐條は司法權に關する公開の原則を定めたのでありまして、彈劾裁判所における規定は、憲法上特にその點に關する規定がある以上、これは特別法であり、八十弐條の規定の原側そのままが彈劾裁判所の公開原則に適用されるものだとは解されない。かように解している次第であります。今申し上げましたような意味合におきまして、弐十六條の但書に公序良俗を害する恐れがある場合には公開しないでこれを行うという例外的な規定を置くことは、憲法違叛ではなかろうと、かように考えておる次第であります。しかしこの點につきま\xA1

しては、皆さま方の御意見を拜聽したいと思つている次第であります\xA1

 次に第弐十八條の規定でありますが、これは「罷免の訴追を受けた裁判官を召喚し、これを訊問することができる」こういう場合におきまして、訴追を受けた裁判官に對しまして、あるいは強制的に不利益な供述を強要するのではないかというような意見があつたのでありますが、これは憲法の第三十八條に「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」という規定があるのでありまして、この憲法上の原則は當然のことだと考えまして、特に規定を置かなかつたのであります。