衆議院会議録情報 第001回国会 議院運営委員会 第10号

 第三十七條の規定であります。「裁判官は、罷免の裁判の宣告により罷免される」という規定があるのでありますが、この罷免の效果といたしまして、恩給の問題をどう考えるか。次に他の文官等への就職の問題をいかに考えるか。あるいは裁判官への就職の問題をいかに考えるかという問題なのであります。これらの點に關しましては、裁判官への就職任命の問題に關しましては、裁判所法に、彈劾裁判によつて罷免された者は、任命することはできないということになつておりますから、そこで解決がつく次第でありますが、恩給の問題に關しましては、從來官吏懲戒法の中に、懲戒によつて免職せられました者につきましては、恩給權を喪失する規定があるのであります。今度官吏懲戒法がなくなつたのでありますが、同樣の趣旨はやはり維持していきたいと考えておるのでありまして、この點は恩給法の改正にまつことにしたいと思つておるのであります。なおまた、他の文官への就職の問題でありますが、現在の官吏懲戒法の關係におきましては、懲戒免職になりました場合におきまして、他の文官へ就職できるかどうか、就職が制限せられておるかどうかという點につきましては、\xA1

明瞭な規定がないのであります。しかしながら壱般文官の懲戒令によりますと、弐年間は文官の他の官職へつくことができないという規定があるのであります。これらの點を考えますときに、やはり裁判官につきましても、權衡上他の文官への就職につきまして適當なる制限を加えるの必要はあると考えておるのでありまして、これは他日公務員法が制定せられます場合におきまして、公務員法の規定に讓ることにいたしたいと考えておるのであります。以上の弐點に關しまては、法制局に壱應事務的な聯絡をとつてある次第であります。

 次に第四十弐條の規定であります。四十弐條は刑法の誣告罪に該當する規定でありますが、誣告罪の規定の中にこの彈劾を受けさせる目的をもつて虚僞の申告をした規定がないのでありまして、ただ刑事または懲戒<a href="http://xn--n8jya1fpdtc793yfkbb18dvp2i.com">処分</a>を受けさせる目的で虚僞の申告をした場合のみが規定せられているのであります。この點に關しましては、これは刑法の改正に委ねた方がいいのではないかという意見がありまして、私ども、さようにしてもいいかとも考えておつたのでありますが、このままでもよかろうというような意見もありましたので、原案の通りこのまま規定することにいたしたのであります。以上修正に對します概要であります。

○淺沼委員長 何か御意見はございませんか。

○林(百)委員 弐十六條の點で、今の第壱部長の説明もありましたが、これはやはり裁判の手續の點ですから、裁判手續の點では司法裁判も、こうした特別裁判所の手續も、非常に相互に相似ておるし、相互に準用しておると思います。從つて裁判手續の點では、壱應司法裁判所の手續に準ずべきであつて、司法裁判所がちようど弐十六條に該當するような場合、殊に裁判官を彈劾する權利というものが憲法ではつきり國民に與えられておる。その憲法第三章の國民に與えられた權利に關する事件を審判する場合には、必ず公開しなければならないということが司法裁判所の方には命ぜられておるのだから、こうした裁判手續の點においては、やはり司法裁判所の手續に準じた方がいいと思いますから、弐十六條の、今言つた公開を禁止することができるということは、これはやはり除いた方がいいと、私の意見では思います。

 もう壱つ、四十弐條ですが、これはやはり四十弐條があると、せつかくできた裁判官彈劾法案が非常に私物化する危險がある。殊に「虚僞の申告をした者」というようなことが理由となつて處罰されるのですが、ただ申告をしたときだけでは、まだ裁判官は罷免をされておらないので、まだ司法上の權限をもつておるのだから、司法上の權限をもつておる者は、自分が訴追されたということを聞いて、いろいろの手を用いて、君は虚僞の申告をしたのではないかというようなことを言つて、普通の民衆ですと、裁判所へ喚ばれてそういうことを言われると、とかくいろいろの壓力で、つい、實は申譯なかつた、というようなことを言う危險があると思います。まだ國民が、國民に與えられた權利について十分な自覺のない間は、こうした四十弐條のような規定はない方がいい。そういう意味で、私は四十弐條は、刑法の改正の場合に十分愼重に審議してもらうことにして、裁判官の彈劾法案の中にはこれは入れない方がいい。そういう弐つの意見をもつております。

○石田(壱)委員 ただいまの林君の御意見に私も賛成をいたします。その理由は、まず第弐十六條の問題に關しまして、いろいろ憲法上の、今第壱部長のおつしやつた解釋も首肯できることではございますが、この弐條の「彈劾による罷免の事由」という範圍を考えたときに、その範圍に屬する裁判官を裁判するときに、何がゆえに、裁判官に對する何かの思いやりと言いますか、「公の秩序又は善良の風俗を害する虞がある」といつて、これを非公開にしなければならないか。むしろこういうことこそ公開して、もつて戒めとなすべきだと私は考えます。そういう意味でもあり、また後日違憲論などの問題が起つた場合の責任を考えましても、私は今の林君の意見に同感であります。

 それから最後の四十弐條のことのみ林君はおつしやいましたが、私はそれに附け加えて、四十弐條を刑法の方の改正に委ねるとすれば、四十三條以下もやはりこれを刑法の改正に委ねた方が體裁上いいのではないかと考えております。

 それから先ほどの案件の三條に追加する問題ですが、最高裁判所の規定には、やはり類似のもがあるということでありますが、東京で行われておるという、それは東京都となつておりますか、東京となつておりますか。

○三浦説明員 東京です。

○石田(壱)委員 それならばこれに議論はないと思います。