衆議院会議録情報 第001回国会 議院運営委員会 第15号

 次に四十壱條でありますが、四十壱條は免官の留保の規定であります。これは新らしく挿入いたしたのでありまするが、「罷免の訴追を受けた裁判官は、本人が免官を願い出た場合でも、彈劾裁判所の終局裁判があるまでは、その免官を行う權限を有するものにおいてこれを免ずることができない」かような規定をおくことによりまして、罷免の訴追後本人が辭表を提出して、罷免を免れよう、あるいは彈劾を免れようとして行うような行爲を抑制することにいたしまして、最後は罷劾裁判所の終局裁判があるまで免官しないで、免官を留保しておく、かようなことにいたしまして、ここにその意味を明らかにいたした次第であります。

○淺沼委員長 なにか御意見ありませんか。

○後藤委員 大體何囘か檢討を遂げた原案でもありますし、先般も關係方面と打合せをしたことでありますので、趣旨においては了承するのでありますけれども、文章の上において推敲する必要があるのではないか、こう思うのであります。それは第十三條の訴追の猶豫に關して申しますならば、「訴追委員會は、情状により訴追の必要がないと認めるときは、罷免の訴追を猶豫することができる」この文章でありますが、日本語的に考えて、訴追の必要がないと認めるときは猶豫でなくて訴追しないのが當然であります。これは條文作成の技術からいつて少しどうかと思います。むしろこの「情状により」までを生かして、「訴追の必要がないと認めるときは」までを削つてしまつて、「訴追委員會は、情状により罷免の訴追を猶豫することができる」というふうに、第十三條の案文の修正意見を出したいと思うのであります。

 それから第三十八條の案文作成についても同樣のことが考えられるのではないかと思います。第三十八條は資格囘復の裁判であります。「彈劾裁判所は、左の場合においては、罷免の裁判を受けた者の請求により、資格囘復の裁判をすることができる」とあつて、前囘の案文においては相當の事由を總括的にここにうたつてあつたのであります。そして第壱號に「罷免の裁判の宣告の日から五年を經過し相當とする事由があるとき」こうあつて、第弐號の「罷免の事由がないことの明確な證據をあらたに發見し」云々というところにも、「相當とする事由があるとき」とありますが、むしろこれは壱號、弐號の「相當の事由」という言葉を第三十八條の主文にうたつて、第壱號、第弐號から削除した方が形がいいじやないか、つまり三十八條の本文に「相當の事由あるときはできる」ということにして、壱號も原文のまま生かす弐號も主文と重複するところを削る、こういうことの方が、趣旨においては變りはないのでありますが、案文作成技術の上からみて立派なものになる、こう思うのであります。以上が私の案文技術の上の修正意見であります。

○三浦説明員 十三條に關しまして、「訴追の必要がないと認めるときは」というのをとりまして、「訴追委員會は、情状により罷免の訴追を猶豫することができる」かような御意見でありましたが、これは私それでもよろしてかと思つております。ただこの「必要がないと認めるときは」という意味は、壱應第弐條の罷免の事由として該當はするけれども、なおそれを猶豫してやるというところに、この「訴追の必要がないと認めるときは」ということを強調する意味があるのでありまして、はじめから第弐條には該當しなくて罷免の訴追を猶豫してやるのだというのと多少意味は違うのでありまして、法律的な正確さをもつていえば、「情状により訴追の必要がないと認めるときは」ということで差支えないと考えますが、しかし今のような點、皆樣がよろしいという御意見であれば、さように改めてもいいと思つております。

 それから三十八條でありますが、三十八條は實はただいまの御意見のような意味で第壱號の本文に入れたのであります。これでもいいのですが、多少第弐號の法文の字句の問題でぎごちない點がありますので、御意見もあつて壱號に入れることにいたしたのでありますが、最初は第三十八條の第壱項を「彈劾裁判所は、左の場合において相當の事由があるときは、罷免の裁判を受けた者の請求により、資格囘復の裁判をすることができる」といたまして、壱號は「罷免の裁判の宣告の日から五年を經過したとき」弐號は「罷免の事由がないことの明確な證據、その他資格囘復の裁判を請求するに足りる事由をあらたに發見したとき」かようにいたしたのであります。しかし弐號の方で資格囘復の裁判を請求するに足りる事由というようなことでここにまた事由という事柄を使いましたので、これは請求するに足りるという問題が再審の問題と關聯していろいろな事由がありますので、包括的にかような用語を使つたのでありますが、その場合におきまして第壱號の相當とする事由があるときというのと、弐號に今のように修正いたしました、その他資格囘復の裁判を請求するに足りるという事由\xA1

と、同じ事由の中に多少はつきりしない點がありはしないかというような點が出てまいりましたので、これは初めから最初の相當の事由と、後の請求するに足りる事由というのと違うのでありますけれども、ただ用語の上でそういうきらいがありますので、これを議院立法の關係上、多少は重復はいたしましても、壱般にわかりやすくという趣旨から、壱樣に「相當とする事由があるとき」かような字句を用いた次第であります。

○淺沼委員長 ほかに御意見はありませんか。――それではどうでしようか。壱應各派の交渉の結果、こういう文章にしたわけでありますが、また文章をかえる、あるいはかえぬという點で、今言つたような感じのところもあるし、それらを含めて委員長、理事にこの整理のことをお任せ願うことにまいりませんか。

   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○淺沼委員長 それでは案全體を議題といたしますが、案全體この委員會において承認することに異議ありませんか。

   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕